子ひつじのチャンス
子ひつじのチャンス
土日のデリバリーからファームに戻るとリビングに子ひつじがいた。
なんでも生み落とされたまま瀕死になっていたところをワーカーに助けられたそう。
日本と真逆で冬のタスマニアだ。
身体を洗い、暖かいタオルでくるみ、ミルクを与えた。
日に日に元気になり、
メエメエと人を追いかけジャンプしてミルクを求める。
人のうえでおしっこをしてくれる。
薪ストーブの前ですやすや眠る。 (全くどうやって野生に戻るのか。)
生まれて1週間、元気になったところで群れに放された。
群れにはお母さんと妹もいる。
妹は、チャンスよりもっとふっくらとした身体でお母さんの乳を飲んでいる。
チャンスがメエと鳴けばお母さんもメエと答えて走り寄る。
だけどチャンスは逃げるし、お母さんも匂いを嗅いだ後に離れてしまう。
群れのひつじもチャンスに興味があるようで、匂いを嗅ぎにくる。
頭でチャンスを押して倒すひつじもいた。
結局、群れから離して家に戻すことになった。
チャンスはすっかり人間といることに慣れてしまった。
いのちは助かったが、彼はひつじの群れに戻れないのか。
そもそもこのひつじ達は食用だ。
なんとも言えない気分だった。